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データから考察する、淡路島で障がい者が活躍することの意義

2025.7.6

【テキスト:松本 守史 (森の木ファーム株式会社 代表取締役)】




淡路島で障がい者が働くことの意義を、データをもとに考察していきたいと思います。



「生産年齢人口に占める障がい者の割合は7~8%」



この割合、どう感じますか?私としては「こんなに多いんだ」と正直驚きました。


例えば法定雇用率という数字があります。法定雇用率とは民間企業に課される障がい者の雇用割当で、企業は従業員に占める障がい者手帳保持者数を法定雇用率以上にする義務があります。この法定雇用率は、現在は2.5%です。法定雇用率を参考にすると、生産年齢人口に占める障がい者の割合は4%前後ぐらいかと、なんとなく思っていました。


(推計の根拠はコラムの最後で示してますので、気になる方はそちらも確認してみてください)



「淡路島で令和5年に生まれた赤ちゃんの出生数は562人」


この数字はどう感じられますか?私にとっては相当少ない印象です。内訳は洲本市206人、南あわじ市184人、淡路市172人です。兵庫県の人口動態調査で数値が公表されています。




「令和5年生まれで成人後も淡路島に残る人は170人程度」


成人して淡路島に残るのは3割ぐらいな気がします。これは私の肌感覚的なものでファクトとはいえません。ただ、私の小学校の同級生で淡路島に残っている人の名前を数え上げてみると、多くてもそれぐらいでした。となると、令和5年生まれで成人後も淡路島に残る人は、170人程度しかいないかもしれません。



「令和5年生まれの子どものうち、40~45人程度は障がいを持つ可能性がある」


生産年齢人口に占める障がい者の割合は7~8%でした。令和5年の出生数から割り出すと、40~45人程度が何らかの障がいを持つ状態になる可能性があります。


障がいを持つと、様々な理由で移動が減ります。上記の40~45人のうち、25人は淡路島に残ると考えてもいいのではないかと思います(ただしこれも根拠がある数字ではありません)。




「令和5年生まれの人材を淡路島の企業が採用しようとすれば、170人のうちから採用しなければならない。そのうち25人は何らかの障がいを持っているかもしれない」


この結論は粗い未来予想かもしれませんが、なかなかインパクトのある数字ではないでしょうか。約20年後には、淡路島はこのような状況になっている可能性があります。私はこれこそが、淡路島の会社が障がい者雇用に目を向けなければならない理由だと思います。企業が「若くて優秀な人を採用したい」と思うのは自然な発想ですが、人材採用はどんどん難しくなっています。採用の条件にこだわっていては、いつまでたっても人を採用ができない時代になりつつあります。むしろ障がいの有無に関わらず、働きたいという意欲を持った人材であれば活躍できるような、人を育て活かす会社を目指していく必要があるのではないでしょうか。


「障がい者雇用」と聞くと、特別なことのように思うかもしれません。でも、企業がやるべきことはとてもシンプルです。その人に合った仕事を見つけて、働きやすいように環境を整え、お互いにやりやすい方法を話し合いながら工夫していくこと。これは、これまで多くの経営者が、人手不足や現場の課題に向き合いながらやってきたことと、まったく変わりません。またこの考え方は、障がいのある人だけでなく、子育て中の方や高齢の方、外国人など、さまざまな事情を持つ人たちにも当てはまります。つまり、「誰にとっても働きやすい職場」をつくる取り組みの第一歩として、障がい者雇用は非常に意味があります。


障がい者雇用は制度や支援機関がしっかり整っており、企業にとって始めやすい仕組みになっています。障がい者雇用がきっかけとなり、社内の仕事の進め方や文化を見直すことができれば、結果的に色んな人が長く働ける会社に変わっていくことにもつながります。障がい者雇用は決して特別な雇用ではなく、むしろ「これからの時代に必要な会社のあり方」を考えるための、実践的で、価値のある取り組みです。


私は森の木ファームの事業を通して、そのようなチャレンジを行われる企業様を全力でサポートさせていただきたいと思っています。





※【生産年齢人口に占める障がい者割合の推計に使用したデータの紹介】



生産年齢人口(15~64歳人口)は7361.2万人

『令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)』を踏まえて厚生労働省が推計した日本の障がい者数

総数は1164.6万人(人口の約9.3%に相当)

そのうち65歳未満は53%とされており、1164.6×53%≒約617万人

14歳未満の障がい者数の推計がないので正確には分からないが、 15〜64歳の障がい者数は550万人ぐらいか



生産年齢人口に占める障がい者の割合は、

550万人÷7361.2万人≒7~8%

生産年齢人口のうち障がい者の割合は7~8%


【参考サイト】

・総務省統計局/人口推計

・厚生労働省/令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)

・兵庫県/人口動態調査(確定数)の概況