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「農福連携」への違和感 ~大切なのはご当地ごとの「〇福連携」~

2026.2.15

【テキスト:松本 守史 (森の木ファーム株式会社 代表取締役)】




福祉との連携と言うと、「農福連携」という言葉が有名です。
当社も「森の木ファーム」という社名で農業(と言っても椎茸栽培は実は林業に分類される)を行っていますので、農福連携と言っても間違いではないのですが、私個人としては「こだわりを持って農福連携を推進している」というわけではありません。




農福連携は農業の担い手不足や耕作放棄地問題と、障がい者の就労の場や所得向上の、両得を実現できる取り組みとして2010年代より注目を集めるようになってきました。「障がい者が作物を育てるのは精神的にいい影響を与える」「障がい者は土いじりを好む」などと言われることもありましたが、私としては、そうかなぁ…と思ってきました。農業が障がい者に向いてるとは、いろんな理由で言えないような気がします。


・天気に合わせて臨機応変に作業しなければならない
・暑さ寒さの影響を受け、力仕事や中腰での作業などもあり、身体に対する負担も大きい
・作業に習熟する前に季節が変わってしまう
・病気や害虫の発生などのイレギュラーが起こる


森の木ファームも地元の農家や加工場のお手伝いをしたことがあります。3反ほどの田んぼを借りて小麦を育てたこともありました。やってみて感じたのは、農福連携は農業の担い手不足の解決策にはなれないだろうということでした。一つの福祉施設が耕作できる耕地の面積は限られています。僕らがどれだけ一生懸命農作業を行ったところで、耕作放棄地の拡大を止められるものではありません。また、南あわじ市内にはB型事業所を運営する法人は当社を含め2法人しかなく、どちらもすでに農業を行っています。連携ができる福祉施設の数も限られているのです。




また、福祉政策としても農福連携は主役ではありません。企業等で働く障がい者は増えてますし、また施設外就労(福祉施設の利用者と職員が提携先企業に出かけていって作業する働き方)の内容も多様化しています。農作業を楽しい、もっとやりたいと言ってくれる利用者も少数でした。農業以外の作業依頼もありましたので、農福連携にこだわる必然性は感じられなくなっていきました。


私が意味がないと感じていたのは、「働いてくれる人がいなくなったから、障がい者でいいわ」と、今までのやり方を変えないまま福祉に頼ろうとする安易な農福連携です。そのようなやり方では、対応できる障がい者も限られますし、続けていくことがすぐに難しくなります。福祉と連携を考える際には、連携をきっかけに設備を導入して作業効率を高めたり、逆にひと手間増やすことで付加価値を上げるような、事業者も福祉も収入を増やすことができる工夫が必要です。そのような工夫を見つけることができれば、事業者と福祉の双方にとってWin-Winな、質の高い連携が実現します。


そのような思いで現在森の木ファームでは、観光業と福祉の連携に力を入れています。いわば「観福連携」です。今回は当社の取り組みを2つご紹介します。



<①観光施設からの積極的な作業受託>



例えばこちらの商品は、玉ねぎをネットに詰め、商品を説明するタグをつけています。元々は観光施設の売店のバックヤードで、店員さんがネット詰めを行ってました。しかし繁忙期になるほど売り場は人手を必要とし、ネット詰めが追い付かず、商品が足りなくなることもあったそうです。森の木ファームに委託することで繁忙期に商品を切らすことなく、店員さんも店頭に立てるようになりました。


玉ねぎはバラでも売れますが、ネットに詰め、商品説明のタグをつけ、このような体裁とすることで、バラで売るよりも高値で販売することができます。このようにひと手間かけることで付加価値が生まれる部分を福祉がお手伝いすることで、観光事業者と福祉、観光客の3者にとってWin-Win-Winである連携が実現しています。



<②製造過程で障がい者が関わる商品の開発>



商品開発は「森の木商事」として取り組んでいます。森の木商事の商品開発は、地元事業者と島内の福祉施設を森の木商事がつなぎ実現しています。障がい者施設の商品には、以下の4つの特徴があります。


1. 販路が限られている商品が多く、関係者の間で消費されているものも多い。
2. 手作りで丁寧に作られているにもかかわらず、元々かなり安価な値段設定がされている。
3. 人の手によって製造しているものが多いため、小ロットでも柔軟に対応が可能。
4. 販路拡大は施設利用者の工賃に直結し、社会貢献性が非常に高い。


森の木商事の商品開発では、売り場と施設をつなぎ、(3)(4)のメリットを生かし、売り場の意見を反映した売り場が売りたい商品の開発を行っています。ある程度の販路を見込むことができれば、施設はより強気の値段設定が可能になり、工賃の向上につなげることができます。



…いかがでしょうか?
まだ始まったばかりの小さな取り組みですが、これらの取り組みでは事業者と福祉の双方にとってWin-Winが実現できていると思います。


観福連携も農福連携も、福祉と連携するだけで価値があるわけではありません。連携により、きちんと付加価値を生み出すことができるかどうかが問われるのではないかと思います。


また観福連携は私たちが淡路島で活動しているから実現できたことであり、全国どこでもできることではないと思います。地域地域で産業構造も都市経営課題も活動主体も異なります。それぞれの地域で、その地域だからこそできる連携の形を模索していくことに意味があります。どこかの地域の成功事例をコピーすることから一歩進めて、それぞれの地域の都市経営課題を踏まえた、志の高い連携の形を模索していってほしいと思います。



皆さん、企業と福祉施設の連携の可能性に、もっと目を向けてみませんか?