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武庫川女子大学の実践学習プログラムとして、6人の学生さんが森の木ファームの取材をして記事を書いてくれました!
福祉を勉強したことのない学生さんたちの目に、森の木ファームはどう映ったのか??
6人6様のコラムを紹介させていただきます。
(第3弾/全6本)
【テキスト:遠藤なつ美】
森の木ファーム株式会社は、障がいのある方々に向けて働く場所を提供する就労継続支援B型という福祉サービスを提供しています。
この記事では、就労継続支援B型事業とはどのような取り組みで、どのように利用者さんの支援を行っているのか、森の木ファームの具体的な活動とともに紹介します。
この記事では以下のことを紹介します!
・森の木ファームの就労継続支援B型事業
・施設での具体的なサポートや工夫
・森の木ファームがめざすこと
・まとめ(インタビューを終えて)
<インタビュー紹介>
遠藤
大手前大学の4年生です。人の話を聞いて自分なりの視点を持ち、現実社会について理解したいという気持ちがあり、今回のプロジェクトに参加しました!
大橋さん
森の木ファームのB型の工場長をされています。インタビュー当日は取り組みについてのお話や、しいたけ工場をご案内いただきました!
—就労継続支援B型とは、具体的にはどのような取り組みなのでしょうか?
大橋さん(以下略)「就労継続支援B型事業とは、障がいがある方々に就労の機会を提供し、自立した生活をサポートするための福祉サービスで、雇用契約を結ぶことなく、その人の特性に合った作業に従事します。目標は、利用者さん一人ひとりに合わせた働く機会を提供し、体力や作業能力を徐々に向上させることです。例えば、「この作業はできるけど、この作業はまだ難しい」という方には、少しずつ作業を増やしていき、できる範囲を広げていきます。1年後には、できることが増えたと実感できるケースも多いです。」
—森の木ファームのB型事業の特徴的な取り組みや事業内容について教えてください。
「しいたけの栽培をしています。もともとは就労継続支援A型事業(B型との違いは雇用契約を結ぶこと)を行っていた森の木ファームですが、しいたけの価格下落や原材料費の高騰により、B型に切り替えました。B型に変更したことで、作業能力に関わらず働きたいという意欲がある方ならだれでも受け入れることができる体制を整えました。
現在は、しいたけと新たに始めたきくらげの栽培を行っています。きくらげは高温多湿を好むキノコため、夏場に需要が減る椎茸の出荷を補うために取り入れました。利用者さんは、こうした作業を通じて、就労に必要なスキルや知識を身に付けていきます。」
(ちなみに森の木ファームには椎茸以外に軽作業をする班もあるのですが、今回は椎茸の話を中心にうかがいました。)
—具体的な作業の中でどのようなサポートが行われているのでしょうか?
「長時間立って作業するのが難しい方には座ってできる軽作業を提供するなど、利用者さんの特性に合わせて作業内容を提供しています。また、菌床を並べる作業では、ゴムベルトを使って等間隔に並べられるようにするなど、作業がしやすくなるようなサポートをしています。利用者さんの気持ちを大切に、仕事に集中できない場合には、相談時間を設けて個別に対応したりもしています。
作業時間も、利用者さんの体調や集中力を考慮して調整しています。例えば、軽作業は50分ごとに休憩を取り、長時間の作業がしんどくならないように工夫しています。」
—工賃向上のために取り組んでいることは何ですか?
「工賃を向上させるため、無駄な廃棄を減らす工夫をしています。例えば、しいたけの一部が黒くなっても食べられる部分は無駄にせず、加工用の商品として出荷しています。また、エネルギーコストの節約を図り、需要に応じて生産量を調整しています。こうした取り組みの結果、森の木ファームでは、全国平均を上回る工賃を支払っています。今年からは、工賃が420円にアップしました。」
しいたけ菌床の現場をみて、質高く効率的に生産するために季節によって生産方法を変えたりと、試行錯誤されている様子が見られました。また、利用者さんの工賃をあげるためにも、様々な工夫や意識があるのだなぁと。利用者さんの働くペースを大事にしつつも、目標を持ち、少しでも工賃を上げて還元していく意識があることを知りました。
しいたけの売り方では、支援施設で作ったということを書かず、社会と変わらない基準で商品の品質で勝負しているところも印象的でした。周りのしいたけと同じように、店頭で普通に並んでいるということ。そして、ちゃんとおいしいということ。同じように手に取ってもらうことも大切なのかと感じました。
—利用者さん一人一人の特性をどう活かしているのでしょうか?
「まずは一通り体験利用をしてもらい、その後どの作業が向いているかを見極めます。作業内容は、利用者さんの体調や気分に合わせて柔軟に調整し、ご本人の希望も大切にしています。体調に合わせて無理をせず、仕事を進めることができるよう、朝礼や作業の途中で気になる点を話し合う時間も設けています。」
他にもインタビューでお伺いする中で、生産現場でリーダー的にたちまわる班長制度や、班長になるための信任投票があることには驚きでした。周りからの信頼がないと班長にはなれないのです。職員さんも手をまわして、先回りしてフォローするのではなく、利用者さんを信じて、ちゃんと成長していってもらうこと、ちゃんと報告できるようにすることなどを大切にされているのが印象的でした。
—これまでに印象に残った利用者さんとのエピソードがあれば教えてください。
「ある利用者さんは、最初は出荷作業をしていましたが、しばらくしてからは、しいたけの発生作業に挑戦しました。この方は最初は難しいと思っていた作業にも、少しずつ慣れ、自分でできることが増えていきました。
福祉で関わるおもしろさとして、「この方は、この作業をすることは向いていないかもな」と思っていたことができるとか、思い込みが裏切られたときに、おぉ…ってなるんです(笑)いろんなものの組み合わせで、できなかったことができるようになるとか、その人が元気になっていくとか、福祉ってそういう部分ではクリエイティブな仕事だと思います。」
今までできなかったことができるようになったことに、喜びを感じるということがスタッフさんの話から伝わってきました。ともに歩いているような感じですかね。関わっているスタッフさんからはいきいきしている様子が伝わってきて、やりがいが自然な形で存在しているように見えました。
—B型での支援を通じて、森の木ファームが目指していることは何ですか?
「森の木ファームのB型事業の目的は、利用者さん一人一人に合った支援を通じて、最終的に自立した生活を送れるようにサポートすることです。また、就労に向けての準備をする一方で、工賃アップにも力を入れ、安定した収入を得られるよう努めています。個々の目標やペースを大切にしながら、それぞれが本当の意味で成長できるように支援しています。」
私は福祉施設のイメージとして、これだったらできるよねという感じで仕事を託しているイメージがありました。しかし、実際に現場をみて、次はこんなことをお願いしてみようなど利用者さんの成長を見据えて、信頼し、仕事を依頼されているように感じました。障がいがあることを理由に、できることに限界を職員が勝手に定めていない姿勢がそこにはありました。
私はたまたま今現在、支援される立場ではないけれど、実際にその立場になって考えてみたときに、枠組みや限界を定めないで接してもらえることはきっとすごく嬉しいし、自己肯定感の向上につながるように感じます。また、社会の中で障がいがある・ないに関わらず、色んなことで枠を決められたり、限界を決められることがあると感じるので、共通して大事にしたい姿勢だと感じました。みんなに言えることだなぁって。
できるところを増やしていこう、できるところからやっていこう
できることが増えたら一緒に喜んだり、楽しんだり、それが仲間って感じがします。
社会と違うようで同じ、いい意味で特別扱いしていないのも良いところだと感じました。
インタビューに快く応えてくださった大橋さん、本当にありがとうございました!