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当サイトのトップには、「持続可能な地域経済」というキャッチコピーを掲げています。森の木ファームは地域経済を支える福祉事業者であることに、こだわりを持って運営しています。コラムの第一弾では、この「地域経済」について書きたいと思います。
(私自身が地域経済について関心を持つようになった経緯については、会社概要の挨拶文に記載していますので、ご覧いただけますと幸いです。)
地域経済とは、ある区域内で行われている経済活動を意味します。
では地域経済が持続可能とは、どういうことでしょうか?
淡路島全体を1つの地域と見立てたとき、淡路島に入ってくるお金を「収入」、淡路島から出ていくお金を「支出」と考えます。支出より収入が多いと、淡路島はどんどん豊かになっていきますし、支出の方が収入より多いと、淡路島はどんどん貧しくなっていきます。
淡路島からのお金の流出が続くと、地域経済が持続不能になっていくと考えます。地域経済が持続可能であるというのは、淡路島にお金の流入が続くことを意味しています。
地域へのお金の出入りについては、産業連関表という表で知ることができます。兵庫県の市町村ごとの産業連関表が、兵庫県立大学政策科学研究所から発表されています。同研究所の芦谷先生にご協力いただき、淡路島全体で見た産業連関表を作っていただきました。
産業連関表は使いこなすと、経済効果の試算やマクロ経済分析ができるようですが、私はマクロ経済学などさっぱり素人なので、ごくごく浅くしか理解できません(本当は私が書いている内容が正しいかどうかまったく自信がありません)。ただ、この表にある域内生産額と域際収支の金額が、私の興味を引くのです。
産業連関表では、各産業ごとの域内生産額と域際収支が示されています。
淡路島で生産額が多い上位5産業とは、何だと思いますか?農業や観光業かな?と思ったりしますよね。
実は、
第一位:電気機械(2284億1900万円)
第二位:対個人サービス(656億5200万円)
第三位:医療・福祉(650億8500万円)
第四位:農業(503億2400万円)
第五位:不動産(482億1900万円)
いかがでしょうか。意外ではないですか?実は電気機械の生産額が突出しています。
淡路島は三洋電機(現在はパナソニックに吸収合併されている)の創業者である井植歳男さんの出身地です。現在でも洲本市にパナソニックの大きい工場があり、またその下請け工場が集積されています。淡路島経済は電気産業が支えていることが見て取れますね。井植歳男さんが残した電気産業は、淡路島の資本となって今も地域経済を支えていると感じます。第二位の対個人サービスには、ホテルやレストランなどの観光業が含まれます。やはり観光の島であるとも言えそうです。第三位には医療・福祉となっています。有力な産業がなく高齢化が進む地域では医療・福祉が地域経済に占める割合が高くなります。淡路島において、医療・福祉が第三位なのも納得感があります。
第四位は農業となっています。順位としては四位ですが、農産物の単価は安いため、農業が上位に食い込んできている時点で農業が盛んな地域と言えます。また、農産物加工品や野菜などを扱う卸売業の部門の生産額も高く(飲食料品:331億円、商業471億円)、観光業への波及効果を考えると、やはり農業も地域を支える大きな産業であることは間違いなさそうです。(第五位の不動産は、「持ち家の人が家賃として払わなくて済んでいるお金を生産額として考える」という金額が含まれているそうなのでここでは無視します。)
続いて域際収支も見てみます。域際収支とは、淡路島に入ってくるお金、出ていくお金の収支です。淡路島で外貨を稼げている上位五部門を見てみると、
第一位:電気機械(1544億2000万円)
第二位:農業(378億6600万円)
第三位:漁業(177億7400万円)
第四位:生産用機械(96億8200万円)
第五位:その他製造工業製品(94億7600万円)
やはり電気機械はすごいです。また第四位、五位に生産用機械が入ってきているなど、やはり優良な工業が育つと地域に対する経済効果が大きいと感じます。また、二位に農業、五位に漁業が入っています。淡路島外に出荷することで、外貨を稼ぐ産業となっています。もっと単価を上げることができれば、より一層稼げる産業となっていけるポテンシャルがあるように思います。
意外に生産額第2位だった対個人サービスは、生産額に対して域際収支はよくありません(2億7500万円)。淡路島外から参入している事業者が多いことが関係しているかもしれません。島外の会社が淡路島で商売し、もうけを島外に持ち出しているのであれば、観光業で淡路島がより豊かになるためには、地元業者がしっかりと稼いでいくことが重要です。
ちなみに域際収支の赤字額が大きい産業にも目を向けてみると、目につくのは商業(最下位:▲353億500万円)です。商業は生産額では第7位の産業なのですが、なぜ域際収支の最下位なのでしょうか。おそらく淡路島内で調達できる商品が限られているため、淡路島外からの購入が圧倒的に多いのではないでしょうか。個人的にも、服などの買い物は島外ですることが多いですし、ネットショッピングで使う金額の方が多いかもしれません。
全産業部門のトータルでは、淡路島の域際収支は155億2300万円の赤字です。毎年これだけのお金が島外に流出しています。成長産業でしっかり収入を増やす、地域外からの購入を地域内からの購入に少しずつ変えていく、といったことが進められれば、淡路島がまた経済的にも豊かな島になっていくかもしれません。
いかがだったでしょうか。解釈については私の思い込みですので間違っているかもしれませんが、見えてくる世界は興味深くないですか?
産業連関表は5年に1度作られており、現在は平成27年のデータが最新です。だいぶ昔のデータに基づいているので、最新版を見るのが楽しみです。最新のものと5年前ものとを比較するのも面白そうですね。
私としては障がい者が地域経済を支えることに、こだわりを持っています。それこそが、慈善や施しとしての地域共生社会ではなく、障がいのある人もない人も共に暮らす共生社会だと思っています。小さな事業者なのでできることはごくごく小さいですが、当面は地元観光事業者からの作業請負と、廃棄物の再資源化の取り組みを続けていきたいと思っています。